The Hay at Pebble Beach - CA
ショートコースの台頭
最近ショートコースの人気が急上昇している理由はいろいろありそうだが、有力なゴルフコース設計者や有名なゴルフ場はショートコースを次々と導入している。 ここでは、トレンドの最先端を行く 6 コース紹介しよう。
ショーン・トルソン
ザ ヘイ (ペブル ビーチ)
カリフォルニア州
ザ ヘイ アット ペブル ビーチ ゴルフ リゾートは、モントレー半島にある著名なゴルフリゾート曰く、「タイガー・ウッズ流のペブルビーチ」。 米国のショートコース発祥の地に、9 ホールのコースがオープンしたのは 4 月である。コースのレイアウトは、1957年に同リゾートの筆頭プロだったピーター・ヘイ氏が、次世代の若者がゴルフに親しむことができる機会をつくろうとデザインしたものだ。

ペブル ビーチは TGR Design と提携して、同社の経営者タイガー・ウッズ氏に、ショートコースのリニューアルを依頼した。ウッズ氏が米国で初めて設計したのは、ブルージャック ナショナルのザ プレイグラウンドという 10 ホールのショートコース(パー 3) である。

ウッズ氏はザ ヘイをリニューアルするにあたって、47~106 ヤードまで距離の違うホールを 9 つ構想した。なかには、ビアリッツ グリーンやデル ホール(ほとんど視界に入らないグリーンにティーショットを打つ必要がある、パー3 のホール。約1世紀前にアリスター・マッケンジー氏がアイルランドのラヒンチ ゴルフクラブで有名になった)など、クラシックな設計のホールもある。さらに各ホールは、リゾートの長い歴史に敬意を表して命名されている。

コースには、ペブル ビーチ ゴルフ リンクスで有名な7番ホールのレプリカも含まれているが、カーメル湾に面した断崖絶壁の上にあるショートコースのレプリカはない。「ペブル ビーチを訪れる全員が全米オープンのコースでプレイできるわけではありません」 ウッズ氏は語る。「だからこそ全米オープンで有名なホールを 1 つでもみなさんに体験していただけるようにしたかったのです」 pebblebeach.com
ザ バス (デスティネーション コーラー)
ウィスコンシン州
デスティネーション コーラー最新のゴルフコース、ザバス オブ ブラックウォルフ ランがオープンしたのは 6 月。ハーブ・コーラー氏とピート・ダイ氏が1980年代後半に開発した最初のゴルフ場、ウィスリング ストレイツ アット ブラックウォルフ ランから南に約 9 マイル離れたザ バスは、距離 60~160 ヤードの 10 ホールで構成されており、ピート・ダイ氏の弟子であり 30 年間に及んで共に仕事をしたクリス・ルッツケ氏が設計した。

ザ バスは 4 つの水場を中心にした戦略的なレイアウトが特徴だが、実はコースの名称はハーブ・コーラー氏の主要事業だった配管やキッチン、バスルーム業界に由来している。実際にコーラー氏は、その功績からゴルフコースに名を残しただけでなく、配管業界の大物として数十年にわたって米国、英国、欧州を回り、世界の名コースでプレイした経験を生かしてゴルフコースの共同設計者を務めた。

ザ バスには池がいくつかあるが、ゴルファーが選択しない限り、救済措置は不要だ。さらにショートコースでは、あるティーボックスから打ち始めて別のホールのグリーンに乗せるという、自由自在なルーティングを許容している。ただし、こうしたクロスカントリーゴルフは、コース上で一定人数のゴルファーが安全にプレイできる場合に限られている。9 月に開催予定のライダーカップが開催される9月にはでは、あいにく WSTRAITS コース(ピート・ダイ氏設計)でこうした邪道プレイは不可能だ。  destinationkohler.com
ザ クレイドル (パインハースト リゾート)
バージニア州
最近パインハースト リゾートの雰囲気が少し変わったことに、長年のリピーターなら気づいているだろう。米国におけるゴルフ発祥の地とされて久しい由緒あるリゾートは、いわばネクタイを緩め、襟元のボタンを外したのである。若い世代にも人気のゴルフリゾートを目指して、あえてリラックスした環境づくりをしている。ターニングポイントは、2017年にオープンした 789 ヤードのショートコース、ザ クレイドルの誕生だった。

10 エーカーもの広大なコース上では笑い声や陽気な会話が飛び交い、9 ホールあるザ クレイドルに設置されたスピーカーからは懐かしいロックのバラードや流行のポップス音楽が流れ、ラウンドを終えたばかりのゴルファーを楽しませている。9 ホールすべてをギル・ハンズ氏とジム・ワグナー氏が手掛けただけでなく、ザ クレイドルを設計してから一年後には、4 番コースの大規模リニューアルにも着手した。「楽しいコースです。上級者には刺激を与え、初心者には喜ばれています。パターだけでプレーできるのも魅力です」 とパインハースト リゾート&カントリークラブの社長、トム・パシュリー氏は語る。

こうしたショートコースから 1,000 フィート以内の距離に、リゾートで一番人気の本格的なレイアウトを誇る 2 番コースと 4 番コースのティーグラウンドが存在するのも、大きな強みだ。パシュリー氏は 「全長 789 ヤードのザ クレイドルは、パインハーストの真髄を新しい解釈で形にしたコースです」 と認めている。 pinehurst.com
ザ ネスト (カボット ケープ ブレトン)
ノバスコシア州
ゴルフ開発に勤しむマイク・カイザー氏は、「コースが 1 つあれば注目の的になるが、2 つあれば憧れの目的地になる」 という哲学を長年にわたって信奉してきた。カイザー氏がベン・カウアン=デュワー氏と共同開発した北米で 2 番目のリゾート地、カボット ケープ ブレトンには、現在コースが 3 つある。カボット ケープ ブレトンはノバ スコシア州の北東部沿岸にあり、2012年にホイットマン アックスランド&カッテン建築事務所がカボット リンクス(リゾート初の 18 ホール)を完成させて以来、ゴルファーを魅了している。その 4 年後にリゾートの魅力はさらに高まった。ビル・クーア氏とベン・クレンショウ氏が2番目のチャンピオンシップ級コース、カボット クリフスを設計したのである。2020年の夏には、ホイットマン アックスランド&カッター事務所が戻り、10 ホールのショートコースであるザ ネストを完成させた。

設計者のロッド・ホイットマン氏は 「ロール、ディップ、リッジなど自然な地面の輪郭と、ホールの角度が相まって、ゴルフ体験が面白くて刺激的なものになります」 と語っている。「各ホールの魅力はリンクスもクリフも一目瞭然です。既存のゴルフコースの他に、素敵なオプションとしてザ ネストをお楽しみいただけます」

ショートコースは、従来のゴルフコースと同じような興奮を味わえるように設計されているが、たった数本のクラブで挑戦できる。さらに、ザ ネストでは雄大な海の風景を堪能できるだけでなく、最大 8 人のゴルファーが一緒にプレイできる。カウアン=デュワー氏が認めているように、「この新しいショートコースは、現在のゴルフ体験を補完し、あらゆるレベルのゴルファーに多大な楽しみを提供してくれます」 cabotlinks.com
ブートレッガー (フォレスト デューンズ ゴルフ クラブ)
ミシガン州
フォレスト デューンズが本格的なゴルフ場としての地位を確立したのは、2016年にトム・ドーク氏が設計した18ホールのリバーシブルコースをオープンさせてからである。以来、ミシガン州北部にあるゴルフクラブの評判はうなぎのぼりだ。最近では、フロリダ州のウィンターパークにある由緒正しいコース(9 ホール)をリニューアルして評価された建築家、キース・レッブ氏とライリー・ジョーンズ氏が構想した 10 ホールのショートコースを公開した。レッブ氏は 「コース設計に創造性を発揮する余地は意外と少ないのですが、(フォレスト・デューンズの)ショートコースでは遊び心を加える機会がありました」 と語っている。

フォレスト デューンズのザ ブートレッガーには、パインハースト リゾートのザ クレイドルと同様、コースの周囲にスピーカー16台が配置されており、音楽に合わせてチップやパットを打てる。こうした最新設備とリンクスのように正統派なゴルフ場の特徴が共存しているため、ゴルファーは各ホールを自由自在にプレイできる余地が生まれる。全長 65~150 ヤードのホールでは、グリーンの周囲の傾斜や土手を利用して、ボールをフラッグスティックに向かって飛ばせる。ちなみにザ ブートレッガーのコースでこうしたショットを練習しておけば、フォレスト デューンズのリバーシブルコースであるザ ループをラウンドするときに役立つだろう。

ジョーンズ氏は 「フォレスト デューンズは、ゴルフ初心者と 『歓迎の握手』 をして 『これがゴルフの可能性だ』 と言えるような楽しい空間を描くのに、最高のキャンバスでした」 と語っている。「ここは自由です。ビーチサンダルで出かけて、仲間と一緒にフロップショットを打ったり、全ホールでエースを狙ったり、ティーショットでパターを使ってグリーンに乗せたりできます」 forestdunesgolf.com
サンドボックス (サンド バレー ゴルフ リゾート)
ウィスコンシン州
ウィスコンシン州中央部のサンド バレー ゴルフ リゾートにあるサンドボックスは、距離もホール数も少ない他のショートコースとは異なっている。ホールの全長は短いが(各ホールは最大 149 ヤード)、クーア氏とクレンショウ氏の設計したホールが 17 あり、いずれも大胆な輪郭が強調されていて、ショットの成否はバウンドの運にかかっている。

サンド バレーのように、チャンピオンシップ級の長大なコースがいくつもある場合、熱心なゴルファーほどサンドボックスのように短いコースを見落としがちだ。ただし、手入れされた砂の平原をプレイするコースは 「唯一無二のショットメイキングの機会に恵まれた、楽しくてワイルドなコース」 と評されることもあり、ビアリッツ、パンチボール、ダブルプラトー、ライオンズマウス、レダンなど、特徴あるクラシックなグリーンが自慢だ。

サンドバレーのショートコースは正統派といえるのだろうか。2018年のオープンからわずか数ヶ月後、ウィスコンシン州ゴルフ協会によって創設されたパー 3 の州内チャンピオンシップで、サンドバレーのショートコースもゲームの舞台になった。本大会は、おそらく米国で初めて開催されたショートコースの州内チャンピオンシップと考えられており、新しいショートコースが将来にわたって存続する可能性は高いと見込まれている。 sandvalley.com