El Camaleón at Mayakoba - Mexico
プロと同じコースでゴルフを
ゴルファーならレベルを問わず、偉大な先人の足跡をたどれるコース 8 選。
ショーン・トルソン、ラリー・オルムステッド
アマチュア野球選手が、フェンウェイ パーク野球場でグリーンモンスター越えの打球を飛ばすことはまずないだろう。同様に、REC リーグのバスケットボール選手が、マディソン スクエア ガーデンの寄木細工の床でステップバック 3 ポイントシュートを決めることはないだろう。ただしゴルフの場合はアマチュアでも、TPC ソーグラスのスタジアムコース 17 番のティーボックスに立って、憧れのショットに挑戦できる。毎年ザ プレーヤーズ チャンピオンシップで世界最高のゴルフ選手がここでティーショットを打ってきた。ゴルフはアマチュアとプロの境界線が曖昧な珍しいスポーツであり、熱心なファンは PGA ツアーイベントやメジャー選手権が開催されるコースでショットを打ち、パットを沈めることが可能だ。
注意:パインハースト リゾートの 2 番コースとキアワ アイランドのオーシャン コースは、「最先端を行くゴルフクラブ」 で紹介されているため、ここには掲載されていない。 同様に 「学びの休暇」 では、シー アイランド リゾートとぺブルビーチが特集されている。
TPC ソーグラス
フロリダ州
40 年以上にわたり、世界のトップ選手がザ プレーヤーズ チャンピオンシップの優勝を目指して戦ってきた、TPC ソーグラスのパブリック スタジアム コース。トーナメントのテレビ放映を通じて、設計が見事な 18 ホールのコースは抜群の高評価を確立した。端的にいえば、ザ プレーヤーズ チャンピオンシップの開催地は、世界で有数の人気コースなのである。1982年のグランドオープン以来、コースは一般にも開放されている。

PGA ツアーのコミュニケーション担当副社長トム・アルター氏は、「スタジアム コースの魅力は、ラウンドを通じて歴史に挑戦しているような気分になれることです」 と語る。「過去のザ プレーヤーズ チャンピオンシップで見たショットを覚えていれば、世界の偉大な選手と比較して、自分のショットを分析できます」

コース攻略には良質なショットが必要だ、とアルター氏は言う。往々にして、そこそこのショットでは不十分なのだそうだ。ゴルフコースで数年働くベテランキャディのモントレール・ウェルズ氏も、同意見だ。「スタジアム コースでは、失敗がひとつもない場合でもスコアが 100 を切らないことがあるのです。それが現実です」

ソーグラスのチャンピオンシップ コースでティーアップするなら、キャディを連れて行き、そのアドバイスに従うのが賢明だ。2019年の勝者ロリー・マキロイ氏のように、過去のザ プレーヤーズ チャンピオンシップの勝者から学んでもよいだろう。マキロイ氏によると、本コースに対してとくに有効な攻略スタイルがあるわけではないが、保守的になるのが得策だという。「あまり気負い過ぎないでください 」 と語る。「私はドライバーで自由に打ちたいあまり、最初の 3 打を失敗しました。積極的に攻略したかったのですが、できませんでした」

アルター氏はもうひとつ、当然に思えるが、重要なアドバイスをしている。有名な 17 番ホールに到着したら、肩の力を抜くこと。パー 3 のアイランド グリーンに打つティーショットは、それまでのパフォーマンスがどうであれ、ラウンドで最も重要なショットになる。「スタジアムコースをラウンドしたと聞くと、誰もが最初に 『17 番ホールはどうだった?』 と質問しますから」  tpc.com/sawgrass  —S.T.
カパルア
ハワイ州
カパルアのプランテーション コースは、毎年1月開催の 「セントリー トーナメント オブ チャンピオンズ」 の舞台である。この試合には前シーズンの PGA ツアーで優勝した選手だけが出場できるため、世界最高峰のプロゴルファーの憧れの的になっている。つまり、リゾートに滞在するアマチュアのゴルファーは、現代のゴルフ界で活躍する選手の足跡をたどることができるのだ。コースの魅力は、表現しがたい美しさとゴルフの難易度にある。

ゴルフ場設計界の寵児になる前の 1992年に、ビル・クーア氏とベン・クレンショウ氏によって設計されたのが、プランテーション コースだ。2019年に二人の手で改修され、多くのスポーツ専門誌で毎年ハワイのベスト パブリック コースに選出されている。クーア氏とクレンショウ氏の設計によるレイアウトは、起伏のある地形や尾根を上ったり下ったりすることで有名なほか、海峡を挟んでラナイ島やモロカイ島まで広がる絶景を堪能できる。ラウンド中に、鯨の群れを目撃したというゴルファーもいるほどだ。

アマチュア ゴルファーは風景に気を取られるかもしれないが、コースには十分な注意が必要である。白い砂のバンカーを攻略するには、戦略的なショットが必要だ。ただし、カパルアのプランテーション コースは、PGA ツアーのように難易度が高いわけではなく、適切なティーグラウンドを選べば誰でも楽しめるようになっている。全長約 7,600 ヤードのコースをチップ側から攻略してみれば、世界最強のゴルファーがなぜここの貿易風に膝を屈してきたか、理解できるようになるだろう。 kapalua.com  —L.O.
アーノルド パーマーズ ベイ ヒル クラブ&ロッジ
フロリダ州
アーノルド・パーマー・インビテーショナルの開催地であるベイ ヒル クラブ&ロッジのザ チャレンジャー/チャンピオン コースは、伝説のゴルファーであるパーマー氏の名を冠したゴルフクラブだ。ゴルフの王様パーマー氏が自ら設計したコースである、と誤解されているのは有名な話である。パーマー氏は、1975年にこのゴルフクラブを購入し、10年以上前にディック・ウィルソン氏の設計した本来のレイアウトに手を加えた。ディック・ウィルソン氏は定評のあるコース設計者であり、ドラルのブルー モンスター、コグ ヒルのダブスドレッド、カールスバッドのラ コスタなど、有名なゴルフコースを手がけた実績がある。

ベイ ヒル クラブ&ロッジはほぼプライベートだが、ロッジに宿泊する場合に限って、会員でなくてもコースでゴルフを楽しむことができる。チャレンジャー/チャンピオン コースでは 40 年以上もアーノルド・パーマー・インビテーショナルが開催されているため、ゴルフ愛好者の多くはなんとしてもここで 18 ホールをラウンドしたいと考えている。パーマーティーとして親しまれているバック ティーからの距離は 7,400 ヤードを超えており、心臓の弱い方には推奨できない。幸いにもティーボックスは他に 4 つあり、あらゆるゴルファーに対応できるようになっている。コース最大のハザードは、繰り返し現れる水場だ。(ホールの 3 分の 2 で池の攻略が必要になる) 実際、いくつかのフェアウェイは湖を囲むように配置されている。最も有名なのは、コース名物の 6 番ホール。長距離のパー 5 で、ほぼ完璧な逆ハの字型になっており、グリーンに向かうすべてのショットで水場の攻略が必要だ。 bayhill.com  
—L.O.
TPC スコッツデール
アリゾナ州
TPC スコッツデールのスタジアム コースでは、「芝生で行われる最大のショー」 として有名なウェイスト マネジメント フェニックス オープンが開催される。 地上で最多の観客動員数を誇るゴルフトーナメントであり、競馬で言えばケンタッキーダービー、自動車レースで言えばインディ 500 に該当する。PGA ツアー最大のイベントは華やかな雰囲気で、地元のファンの熱狂ぶりはゴルフ界の常識ではとても考えられないほどだ。幸運なことに、トム・ワイスコフ氏とジェイ・モリッシュ氏が設計したコースは 1 年のうち 51 週間、一般客に公開されている。

ティーアップすれば、テレビ放送で有名になった場所を自分の目で確認できる。例えば、1999 年にタイガー・ウッズ氏の邪魔になると判断され、観客が協力して移動させた岩があった場所を示すプレート。さらに、PGA ツアー史上初めて完全に観客席に囲まれた 16 番パー 3 のホールでは、気持ちよくティーショットを打てる。

スコッツデールにあるコースに似た TPC スタジアム コースは、トーナメントの開催と観戦を目的として建築された。ホールの外側に沿った盛土の上に、まるで円形劇場のように眺めの良い観戦スペースが設けられているのだ。ソノラ砂漠に造られたスコッツデールのコースは、ゴルファーが日常的にラウンドできるコースとして、TPC ソーグラスに次いで有名である。 tpc.com/scottsdale  —L.O.
トーリー パインズ ゴルフ コース
カリフォルニア州
サンディエゴのトーリー パインズは、36 ホールを擁する市営ゴルフ場だ。PGA ツアーで毎年開催されているファーマーズ インシュランス オープンの開催にあたっては、チャンピオンシップ基準距離のノースコースとサウスコースが利用される。このうちサウスコースは、全米オープンが 2 回開催されたこともあり、注目に値する。トーリー パインズ初のメジャー大会が開催された 2008 年には、タイガー・ウッズ氏が優勝し、個人で 3 度目になる全米オープンのタイトル獲得だけでなく、14 回目のメジャー大会制覇も果たした記念すべきコースになった。

サウスコースで全米オープンを制したウッズは、月曜日のプレーオフでは長打力を活かして、18 番ホール(パー 5)をわずか 2 打で攻略した。トーリー パインズのコースのうち、チャンピオンシップ ティーから7,800 ヤードの距離があるサウスコースなら、それも納得だ。飛距離の長いゴルファーには有利なコースである。

太平洋を見下ろす崖の上にあり、爽やかな気候の中でラウンドできること請け合いだ。今年の全米オープン観戦後に本コースでプレイする予定なら、設計者リーズ・ジョーンズ氏のアドバイスを参考にしよう。彼は、2001 年にコースを大幅リニューアルし、最近では 6 月のチャンピオンシップに向けて何か所か調整している。「ゴルフでは選択がすべて。常にピンを狙う必要はありません」 とジョーンズ氏は語る。「グリーンまでのエリアは開けているので、ある程度ゴルフを嗜む方ならパッティングやノックダウンショットを楽しんでいただけます。たとえ 3 打目でホールインしても、成功と言えるでしょう。プロは違いますが」  torreypinesgolfcourse.com  —L.O.
ウィスリング ストレイツ
ウィスコンシン州
ライダーカップはゴルフ界で有数の権威あるイベントだが、94 年間の歴史において、米国のパブリックコースで開催されたことはほとんどない。しかし 9 月に開催されるライダーカップでは、米国と欧州のチームがウィスリング ストレイツで激突する。米国のリゾートでライダーカップが開催されるのは、1991年以来 5 回目だ。

1990 年代後半、リゾートのオーナー兼デベロッパーであるハーブ・コーラー氏は、ピート・ダイ氏に対してザ ストレイツ コースの設計と建設を依頼するにあたり、1 つだけ指示を出した。「バリーバニオンのようなコースにしてくれ」それは、はっきり言って至難の業だった。かつて軍の滑走路だった土地には、本来の自然の名残がほとんどなかったのである。アイルランド南西部の荒涼とした風の吹く土地とは、似ても似つかぬ風景だった。

「彼に任せました」 とコーラー氏は振り返る。「口出しはしないようにしました。砂もない状態から始めてもらったのですが、異彩を放つ仕事ぶりでした。まず砂場を探す必要があったのですが、トラック 1 万台分以上の砂を運んできましたよ」

ザ ストレイツ コースは、ミシガン湖畔に伸びる全長 7,790 ヤードのコースで、海からの強風にさらされているが、いろいろな意味で砂が強力な防御壁になっている。その証拠が必要なら、こう考えてみてほしい。リバーコース(ウィスコンシン州コーラーの高級リゾートにダイ氏が造ったゴルフコース 4 つのうちの 2 番目)は、18 ホールに約 50 個のバンカーを配置している。ザ ストレイツ コースでは、11 番ホール(パー 5)だけで同じ数のバンカーがある。「ザ ストレイツ コースは、ゴルファーに不安を与える見た目です」どこでどのようにショットすべきか、手掛りが何もない場合もあります」 デスティネーション コーラーのゴルフ・ランドスケープ・小売部門の副社長ダーク・ウィリス氏は語る。「だからこそキャディは重要です。自分の読みを信じ、ライン取りを信じる必要があります」 destinationkohler.com  —S.T.
ハーバー タウン ゴルフ リンクス
サウス カロライナ州
ザ シー パインズ リゾートの人気コースであるハーバー タウン ゴルフ リンクスは、ピート・ダイ氏が手掛けた傑作で、1969年以降は毎春 PGA ツアーのイベントが開催されている。レイアウトは、全長 7,099 ヤードでショットメイキングを重視。そのため、ドライバーが得意なゴルファーでも、第一打がフェアウェイの狙い目に飛ばないと、アウトオブポジションすることがある。「プロ並みのパフォーマンスが要求されます」 と、リゾートのスポーツ オペレーション ディレクター、ジョン・ファレル氏は語る。「場所だけでなくパフォーマンスも、プロ並みにするのです。いつもとは違う挑戦ができて、バッグに入っているクラブすべてを駆使してショットを打つことになるでしょう」

ファレル氏が認めるように、コースではただ変わった方法で自分を試せるだけではない。ゴルフの試合における個人の弱点も明らかになるのだ。そのため、チャンピオンズ ツアーの選手をはじめとして、ベテランのプロが、自己鍛錬のために長期にわたってリゾートに滞在することもある。「『誰かにゴルフを教えたければ、毎日ハーバー タウンをラウンドさせればよい』 と言われるほどです」 とファレルは語る。「高くても低くても、カットしてもフックしても、ピッチしてもバンプ アンド ランしてもいい。ゴルフのいろはを学べるでしょう」

まるでツアーのような体験は、18 番ホールを出ても終わらない。ハーバー タウンでラウンドした後は、重厚なクラブハウスの 2 階にあるプロ用ロッカールームを利用できる。なんと広さは 4,000 平方フィート(約 372 平方メートル)だ。そこで食事やドリンクを楽しんだり、サウナでくつろいだり、靴をクリーニングしたりできる。「一日中 PGA ツアー選手のような待遇です」 とファレル氏は語る。「どこででもできる体験ではありません」 seapines.com  —S.T.
エル カメレオン(マヤコバ)
メキシコ
これまでに紹介したホテルの大多数は、ゴルフこそが集客の目玉だ。メキシコのリビエラ マヤにあるゲート付きのリゾート コミュニティマヤコバでは、1 年のうち 1 週間だけ、ゴルフが主役になる。PGA ツアーが国境を越えてメキシコへ南下し、マヤコバ ゴルフ クラシックが開催されるのだ。マヤコバにはリゾートが 4 つあり、メキシコの長閑なビーチでレジャーを満喫できる。名門コースでのラウンドも保養休暇も楽しみたいというゴルフ愛好家にとって、マヤコバは理想のリゾートだ。

マヤコバ ゴルフ クラシックが誇る 14 年の歴史を振り返ってみると、優勝者は 4 日間の試合で平均 17.55 打のアンダーパーを記録している。ただし、スコアでコースのすべてを判断できるわけではない。2006 年にグレッグ・ノーマン氏が設計した全長 7,024 ヤードのコースは、マングローブの密林の中にある。遠くに飛ばし過ぎると、場外になってしまう。マット・クーチャー氏はこのコースをラウンドして、 2018 年に 1 打差で優勝を果たした。ツアープロであるクーチャー氏は、1 年後に 22 アンダーの好スコアで優勝した後にも、同コース攻略の難しさを語っている。「ドライバーショットが上手くいけば、パフォーマンスも良くなるチャンスがあります。通常は午後になると風が強くなるので、その場合はしっかりとボールを打ったほうがいいでしょう」「フェアウェイから外れているということは、マングローブやハザードに入ったということであり、ペナルティでドロップをしなければならず、かなり問題です」 つまり、エル カマレオンは典型的なリゾートコースからほど遠いのだ。どうかご注意願いたい。 mayakoba.com  —S.T.