ホテルブランドの住まい

一流レストラン、スパなどの付帯施設に、行き届いたコンシェルジュサービス。

特別な魅力を備えたブランデッドレジデンス(ホテルブランドを冠した分譲住宅)が今、業界で200%の成長率を見せるなど、人気を博している。

JORGE S. ARANGO

オイル・ナット・ベイ(イギリス領ヴァージン諸島ヴァージンゴルダ島)

ブランド:ヴィクター・インターナショナル・コーポレーション(victorintl.com)

建築:ケン・カオ

内装:ヴィクター・インテリアーズ( オイル・ナット・ベイからの直接発注、oil nut bay. com)

面積:最大約1390 平方メートル

寝室:5 ※本記事の紹介物件は、1ベッドルームのゲストヴィラ付き

浴室:6.5 ※本記事の物件

規模:宅地107区画

価格:1224 坪あたり295万~4500万ドル(建売住宅)

特筆ポイント:リゾートホテルと同様のサービス(年会費6万1000ドル、ホテルの宿泊客に貸し出す「レンタルプログラム」に参加する場合は3万1000ドル)が受けられる他、オーナー限定のクラブハウス、敷地内にある最先端の医療クリニックも利用可。カリブ海最大級のサンゴ礁で知られるアネガダ島に程近い立地。


オイル・ナット・ベイのデベロッパーであり、これまで40年間で43件の開発プロジェクトを手がけてきたデイヴィッド・V・ジョンソンは、オイル・ナット・ベイを自身の“グランドフィナーレ作品”と考えている。そこはまさに、楽園そのもののロケーションだった。「私はここに、自然と調和した、ここならではの多世代コミュニティーを造りたいと思ったのです」とジョンソンは語る。オイル・ナット・ベイに家を建てる施主は夢の家を自由に設計できるものの、一定量の地元産の石を使い、風景に違和感なく溶け込ませることが条件となっている。ジョンソンは開発の際、この地に自身の家も建てたが、そこには約700平方メートルもの広さの屋上庭園があり、2017年に亡くなった著名建築家、ケン・カオ制作の玉石やガラスがあしらわれている。今年中に、さらに3つのヴィラが完成する予定。「いずれも自然を主役にした建物です」とジョンソンは言う。「なにせここは、土地と海そのものが美しいのですから」。

バハ・マール・レジデンシズ(バハマ諸島)

ブランド:バハ・マール・レジデンシズ(residences.bahamar.com)

建築:マイケル・ホン・アーキテクツ(mhongarchitects.com)

内装:ウィンバリー・インテリアーズ(watg.com)、アヴェニュー・インテリア・デザイン(avenueid.com)

面積:約70~595 平方メートル

寝室:1~6

浴室:1~6、他に複数のパウダールーム

規模:住宅198戸

価格:72万6500~2500万ドル

特筆ポイント:リゾート複合施設バハ・マール内の会員制クラブハウス、213フィートのスーパーヨットが利用できる他、同施設内カジノでのVIP特権、ギャラリー「ザ・カレント」より版画1点、イギリス連邦における永住権申請の機会などが提供される。


巨大リゾート複合施設バハ・マールには2つのレジデンス棟がある。そのうちの1棟、SLSを手がけたアヴェニュー・デザインの主任設計者、アシュリー・マンハンは、そのデザインコンセプトについて次のように話す。「伝統的な建築要素を取り入れ、周囲の建物にパステルカラーを使用しました」。このコンビネーションにより、SLSはバハマらしさを残しつつ、ヒップでフレッシュな印象に仕上がった。ウィンバリー・インテリアーズが担当したもう1棟のローズウッドは、よりラグジュアリーなコンセプトを採用。モダンとトラディショナルの間のテイストで、シックなソファーと、ラタン製の軽やかだが優雅なウィングバックチェアなどが混在する。高級感がありながら、アイランドリゾートらしい気楽さもあり、古臭さは全く感じられない。SLSとローズウッドは、それぞれ異なる持ち味で好みの違う多くの世代を惹き付けている。

シックス・センシズ・ジル・パシヨン(セーシェル、フェリシテ島)

ブランド:シックス・センシズ(sixsenses.com)

建築・ 内装:スタジオRHE(studiorhe.com)

面積:700~1400 平方メートル

寝室:3~5

浴室:3~5

規模:ヴィラ28 軒

価格:540万~1243万ドル

特筆ポイント:ヴィラのオーナーは、「シックス・センス」ブランドのスパをはじめリゾート内の全施設を追加料金なしで利用できる他、世界有数の手つかずの自然環境で、さまざまな野外活動が楽しめる。


「ジル・パシヨン」とは、地元の言葉で「情熱の島」という意味だ。迫力あるむき出しの黒い花崗岩、生い茂る緑――その豊かな自然を見れば、この群島を造った宇宙の創造主が、並々ならぬ熱意を注ぎ込んだことがうかがえる。このドラマチックな立地は、スタジオRHEの創業者リチャード・ハイウェル・エヴァンズにとって、腕の鳴る素材だった。エヴァンズは周囲と同じ黒い花崗岩を用いたモダンなヴィラを複数設計。「ヴィラの建設で苦心したのは、建物の形や質感を、この環境に溶け込ませることでした。建物があることが分からないくらい、完全に一体化させたかったのです。土台の地面も開削工事など行わず、 そのままの地形を生かして建てました」。 屋内にも自然が取り込まれ、天井からはプールのガラス張りの底を通して太陽光が差し込み、床を突き抜けた巨大な岩がオブジェとしてライトアップされている。

グレースベイ・ヴィラズ( タークス・カイコス諸島)

ブランド:ビーチ・エンクレイヴ(beachenclave.com)

建築:SWA アーキテクツ(swa.tc)

内装:ドミノ・クリエーティブ(domino-creative.com)

面積:約929 平方メートル

寝室:4~7

浴室:4.5~7.5

規模:住宅(残り1軒)

価格:965 万ドル

特筆ポイント:約5キロにわたるグレースベイビーチは、旅行業界のアカデミー賞と言われる『世界を代表するビーチデスティネーション賞』に常時選出されている他、トリップアドバイザーの『世界のトップビーチ』でも首位にランクインしている。


この手つかずの白いビーチでは、新しい物件が出てもすぐに買い手が決まってしまう。タークス・カイコス諸島で3つのプロジェクトを進めているホテルブランド、ビーチ・アンクレイヴでも、グレースベイのヴィラはあと1軒しか残っていない。その内装を手がけたドミノ・クリエーティブのディレクター、テイラー・ドロットマンは言う。「この家に住む人は、どのような休暇を過ごしたいだろう?と想像しながら内装を仕上げました。色調はかなり抑えてあります。派手な色のクッションでインパクトを出そうとは思っていません。調和と安らぎが感じられるよう、全て落ち着いた中間色にしています」。室内に漂う快適な雰囲気は、全て計算して作られたものだ。ビーチ・アンクレイヴではちょうどロングベイに、新しくヴィラ4軒の建設を始めたところで、他にもロングベイとノースショアでも中古物件を販売している。

アンダーズ・タークス・アンド・カイコス・アット・グレースベイ(タークス・カイコス諸島)

ブランド:アンダーズ(andaztcresidences.com)

建築:RADアーキテクチャー(radmiami.com)

内装:モーダス・オペランディA+D(modusoperandiinc.com)

面積:約46~596 平方メートル

寝室:ワンルーム~4

浴室:1~4.5

規模:住宅74戸

価格:45万~680万ドル

特筆ポイント:グレースベイの西の海に広がる珊瑚礁バイトリーフは、この地域随一のシュノーケリングスポット。「コーラルガーデンズ(珊瑚礁の庭)」の別名で親しまれている。


「アンダーズのリゾートには、物語がなくてはなりません」と、モーダス・オペランディA+Dの創業者フランシスコ・ホーヴェは言う。同社はグレースベイの他、メキシコとコスタリカで「アンダーズ」ブランドの分譲住宅を設計している。「グレースベイがあるプロビデンシアレス島には、さまざまな文化や民族が混在しています。私たちはそれを住宅デザインで表現しました。例えばかつてこの島では、経済活動といえば塩田でした。ですからこの住宅の床の白は、塩を表しています」。色とりどりの縞が特徴の民族衣装の柄も、内装に取り入れている。「4種類の違った色調の木材で羽根板を作り、ベッドの後ろの壁に使用しました」。手織りのラグと照明器具には、地元の伝統工芸が生かされている。 さらにホーヴェは、アフリカから伝わった島の文化に、ミッドセンチュリー家具の形や西インド諸島の芸術をミックスさせることで、「素朴になり過ぎず、洗練された印象」に仕上げたと言う

モンタージュ・レジデンシズ・ロスカボス(メキシコ)

ブランド:モンタージュ・レジデンシズ・ロスカボス(montageresidencesloscabos.com)

建築:イデア・アソシアドス(ideasociados.com)

内装:ツイン・ドルフィン・ロスカボス(twindolphinloscabos. com)

面積:約259~335 平方メートル

寝室:2~3

浴室:3~4

規模:住宅52 戸

価格:175~385万ドル

特筆ポイント:付帯施設は3716 平方メートルのスパ、レストラン3軒、1858 平方メートルの複層スイミングプール (「ツイン・ドルフィン・クラブ」の入会費は7万5000ドル、年会費は2万ドル)。


内装を担当したツイン・ドルフィン・ロスカボスのディレクター、アンナ・ルビーは言う。「多くの分譲地で内装のカスタマイズサービスを提供していますが、当社ではさらに高いレベルのカスタマイズが可能です。基本プランあるいは拡張プランを選んでいただいた上で、そこからカスタマイズすることもできますし、ベースプランなしの完全オリジナルはもちろん、他社が内装を請け負っている場合は現場作業だけのご依頼も可能です」。現在、モンタージュ・レジデンシズ・ロスカボスが用意している分譲住宅の内装プランは「異なる素材と手工芸品をふんだんに配した、ニュートラルなスタイル」と、「色やアート作品を散りばめた、フレッシュで楽し気なサーフシックスタイル」の2つだ。どちらにも同じ表面仕上げと木部の細工、地元で調達したこの土地ならではの素材、そして世界各地から集めたさまざまな質感のファブリックが使用されている。「木部の細工は見事ですよ。私たちはその味わいをしっかりと生かしています」。

ザ・レジデンス・アット・マンダリン・オリエンタル・ホノルル(ハワイ)

ブランド:マンダリン・オリエンタル(mandarinoriental.com、moresidenceshonolulu. com)

建築:[au]ワークショップ・アーキテクツ+アーバニスツ(auworkshop.co)、アーキテクツ・ハワイ(ahldesign.com)

内装:ダイアナ・ウォン・アーキテクチャー+インテリア・デザイン(diannawong.com)

面積:約143~616 平方メートル

寝室:2~4

浴室:2~4

規模:住宅99戸

価格:350万~3500万ドル

特筆ポイント:付帯施設はオアフ島最大のスパ、ミシュラン星付きシェフのレストラン2軒(1軒は居住者限定)。ホノルルにおけ

るアートカルチャーシーンの中心地に位置。


「建築や内装のデザインは、よく香水作りに例えられます」と、内装を手がけたダイアナ・ウォン・アーキテクチャー+インテリア・デザインのダイアナ・ウォンは言う。「建築は美しい瓶、そして内装が香水です。私たちは最高級の建材や家具を選りすぐり、ザ・レジデンス・アット・マンダリン・オリエンタル・ホノルルにふさわしい、新しく、かぐわしい香水を生み出しました」。空間にオートクチュールのような高級感を与えるのは、ダーダ社製のキッチンだ。そこにガゲナウ社のコンロ(30カ国語でプログラミング可能)やサブゼロ社の冷蔵庫など、最高級のキッチン家電を配した。ウォンはまた、南国にありがちな白で統一された内装は避けた。「今回のレジデンスは、海が一望できるとはいっても海辺にあるのではありません。都会的な面が売りですから」。代わりに、白い大理石に暗い色の木、鮮やかな色に暗い色の石など、あえて対照的な色彩を組み合わせることで洗練された雰囲気を生み出した。

ザ・リッツカールトン・レジデンシズ(アメリカ、マイアミビーチ)

ブランド:ザ・リッツカールトン・レジデンシズ・マイアミビーチ(theresidencesmiamibeach.com)

建築・内装:ピエロ・リッソーニ(lissoniassociati.com)

面積:186~929 平方メートル~

寝室:2~5

浴室:1.5~6.5

規模:コンドミニアム111戸、ヴィラ15 軒

価格: 200万~4000万ドル

特筆ポイント:付帯施設は、世界初の施設内アートスタジオ、ヨットの係留バース36カ所、船長付きヨット、食材が採集・収穫できる森と菜園、約2020 平方メートルのプールデッキ。


建物の効果的な再利用は難しいものだが、建築家のピエロ・リッソーニいわく、かつてのマイアミ心臓研究所を住宅に作り変え、新たなポルトフィーノ(北イタリアの高級リゾート地)風の建物に生まれ変わらせるプロジェクトも、もちろん例外ではなかった。「ですが新しい発想は、制約があってこそ生まれるもの。そこから真のユニークな解決策が出てきます」。その成果が、ブランデッドレジデンスには珍しい、それぞれ異なる個性を持つコンドミニアムやヴィラだった。どの物件にも、作り付けの本棚や独自の美術・工芸品、家具調度品、照明が配され、“我が家”の雰囲気が漂っている。「シンプル×エレガンスというデザインコンセプトは共通です」とリッソーニは言う。「ですが住まいというのは、あくまでも住む方のもの。購入する方の好みやスタイルが反映されていなければなりません。ですから家具調度品はご自身で選ぶこともできますし、未内装の物件を購入することも可能です」。