電気で爆走せよ

電動化した高性能車が贈る、新たな感動体験。

MARK HACKING

地球温暖化はますます進み、環境問題は今や後戻りできないところまで深刻化している。とはいえ三度の飯より車が好きというあなたも、環境保護のために運転を諦める必要はない。主要自動車メーカー各社は電動化に力を入れ、ドライバーに高速で走る興奮を罪悪感なく味わってもらうべく、進化を続けている。

フェラーリやマクラーレン、ポルシェがもたらしたハイブリッド式ハイパーカー(スポーツカーを超える性能を持つ車)の第一波は、電動化の到来と、電動化こそが未来に向けた正しい選択であることを証明した。その後、アキュラ「NSX」やBMW「i8」などのより入手しやすいハイブリッド車が、電動化の流れをさらに促進。その結果、航続距離は伸び、加速性能も高まるなど、多くの車がパフォーマンスを向上させた。

アストン・マーティン、マクラーレン、メルセデスAMGによる最新電動ハイパーカーの発売が待たれる一方、ロータス、ピニンファリーナなどの老舗メーカー、そしてリマック・アウトモビリなどの新興メーカーが大手と提携し、ハイブリッド車の開発を続々と進めている。しかしこれらが発売されるまでは、ここで紹介する4台が今、最も「未来」を先取りした車と言えるだろう。


レクサス「LC500h」

電気自動車の性能は全般的に大きく向上しており、登場から20年以上経つハイブリッド車も、年々改良されている。その好例がレクサス「LC500h」だろう。伝説的存在のレクサス「LFA」からインスピレーションを得た「LC500h」は、パワフルな動力、電動パワートレイン、そして贅沢さと最高峰の技術を併せ持つ、新しいタイプのGT(グランツーリスモ)カーだ。

3.5リッターV型6気筒エンジンと電気モーターが生み出すのは、354馬力と迅速なレスポンス。時速100キロまでの加速には4.7秒かかるが、これは速さよりもGTカーらしい落ち着いた走りを重視しているからだ。パワートレインは、4速オートマチック・トランスミッション(AT)に電気式無断変速機(CVT)を組み合わせることで、マニュアルでは疑似10速モードを実現。これがパドルシフトを使ったギアの切り替えを、想像以上に楽しいものにしてくれる。さらにハイブリッド車としては珍しくFR(後輪駆動)のため、GTカーらしい走りが堪能できる。

その重量と高いパフォーマンスにもかかわらず、「LC500h 」は燃費効率に優れている。推定燃費は、エンジンと電気モーターの組み合わせで約13km/ℓ。車好きが多いカリフォルニアで、このあたかもデザインスタジオから抜け出してきたような美しいルックスの車を運転していると、誰もが振り返る。中には車に轢かれそうになっていることも忘れて、車と一緒に自撮りしてしまう人もいるほどだ。9万7510ドル。lexus.com

ポールスター「ポールスター1」

ポールスター1」に興味を持ったなら、今すぐ買いに走るべきだ。何しろこの車は、3年間で1500台しか生産されていない。名前もブランド名も聞いたことがないという人のために大まかに説明すると、ポールスターはボルボ・カーズ傘下の独立ブランドで、現在、中国・杭州に本社を持つ浙江吉利控股集団の子会社となっている。ポールスターはスウェーデンのヨーテボリを拠点とし、社屋はボルボの敷地内にあるが、生産拠点は全て中国。そして同ブランドの車は全て、電気自動車かハイブリッド車となっている。

「ポールスター1」はプラグインハイブリッド車で、将来的には同ブランドの全ての車が電気自動車になる予定だ。それまでは、2リッター4気筒ターボエンジンと2つの電気モーターを組み合わせたパワートレインを持つ、この2列シートのクーペをじっくり楽しみたい。最大出力は619馬力、最大トルクは1000Nm、EVモードでの最大航続距離は126キロとなっている。

「ポールスター1」はあらゆる点で、今日、路上を走っている全ての車と異なる。ポルシェ「911」やアストン・マーティン「DB11」の精神を受け継ぐこのGTカーは、ハイブリッド(しかもとてつもなく燃費の良い)でありながら、本物の高性能車でもあるのだ。ハンドルは低速時には驚くほど軽く、速度を上げると車体との一体感を増していく。「ポールスター1」が限定生産というのは、さまざまな意味で残念だ。なぜならばこの車こそ、電気自動車の未来におけるスタンダードなのだから。15万5000ドル。polestar.com

アウディ「RS6アバント」

21世紀初頭、2021年型アウディ「RS6アバント」のような車は「マイルド・ハイブリッド車」と呼ばれていた。しかしスペックを見るだけでは、ボディーに隠された途方もないこのステーションワゴンの本質を見抜くことはできない。48ボルトのマイルド・ハイブリッド・システムはあくまでも脇役であり、主役はボンネットの下の4.0リッターV型8気筒エンジンだ。最高出力591馬力、最大トルク800Nmの「RS6アバント」は、典型的なステーションワゴンとは一線を画す。なにせ4秒以下で時速100キロまで加速し、5人乗車しても306キロもの最高速度を出すことができるのだ。

この車が「電動化」されている最大の理由は「効率化」だ。積荷や人が乗っていない軽量の状態で走行している時は、第二のバッテリーが必要な機器に給電し、エンジンの負担を軽減、またはエンジンを停止して惰性走行に切り替える。燃費をさらに上げるために、気筒休止システムとエンジンのスタート/ストップ機能も搭載している。

スーパーカー並みの加速力に加え、切れの良いコーナリングも自在の「RS6アバント」の実力は、良く晴れた日のサンタモニカ山脈でのテスト走行で既に立証済みだ。全輪駆動システムによるトラクションの向上、後輪のトルクベクタリング機構、そして左右後輪のトルクを配分する後輪操舵システムが、優れたハンドリングを実現。さらに、ハイテク技術を取り入れたインテリアのおかげで、長距離運転でも快適だ。

アウディ「RS6アバント」が素晴らしい車であることは間違いない。この車の性能を体験してしまうと、ほぼ全ての高性能SUVが、時代遅れで退屈に見えてしまうほどだ。10万9000ドル~。audi.com