都会の隠れ家
都心や都市近郊のホテルで最先端のウエルネスを体験しよう。
移動制限がまだ解けない中、遠出しなくても行ける都心あるいは都市近郊のスパやホテルが、ストレス解消や免疫力の強化、ライフスタイルの改善を目指す人向けのユニークなサービスを次々と発表している。客室にエアロバイクを置いた、ボストンのフォーシーズンズホテル・ワン・ダルトン・ストリート・ボストンから、ルルレモン製のバーチャルジムシステム「ミラー・ジム」を備えた「Wellness Suites」7室をお披露目した、ニューヨークのアンダーズ・フィフス・アベニューまで、多くのホテルがエクササイズや睡眠、食事、人とのつながりを充実させてくれる場所に変わりつつある。ここでは、心と体の健康をサポートしてくれるワンランク上のホテル4つを紹介しよう。 —Deborah Frank

カリヨン・マイアミ・ウエルネス・リゾート

安心のタッチレス体験

「最新のテクノロジーのおかげです」と、スパ&ウエルネス事業部の副部長Tammy Pahelは言う。「このパンデミックですから、ご来店に際してのご不安に対応する必要がありました。例えば以前は、スパのロビーに入って来られたお客様はホッと安堵のため息をつかれたものですが、今では『来てよかったのかな?マッサージを受けても大丈夫かな?』とご不安な様子です。マッサージの際はそれほど広くないトリートメントルームで他人と2人きりになるわけですから、ご不安になられるのも無理はありません。よって多くの方が、屋上でのマッサージを選ばれます。そんな中、タッチレス(非接触)セラピーを開始したところ、10~12回券をお求めになる方が増えました。ウエルネス体験はしたいけれど、直接施術を受けるのはまだ不安…というお客様にとって、タッチレスは理想的な解決策です」。

他人に直接触られることのないタッチレスセラピーは、今年になって各地のスパで人気が高まっているが、カリヨン・マイアミ・ウエルネス・リゾートのそれは次元がワンランク上だ。そもそも約6500平方メートルとかなりの広さを誇る同スパでは、最先端技術を搭載した総額150万ドル相当の大型機器を配置し、あらゆる不調に対応できるプログラムを組むのはそれほど難しくなかった。具体的な目標のある利用者には、看護師資格を持つヘルス&ウエルネス担当ディレクターが、利用できるタッチレスセラピーを一つ一つ説明し、オーダーメイドのセットメニューを提案する。特に目標がない場合は、豊富なメニューから好みのセッションを個別に選択しても良い。ほとんどのセラピーはそれぞれわずか15分程度だが、繰り返し受けることで、効果の長期的な持続も期待できる。

例えば振動音響式電磁赤外線療法(VEMI)は、快適な寝椅子に横になった利用者を深い瞑想状態に導きながら、静的電磁界の放射線を細胞から取り除いていく。低温赤色レーザーを照射するプリズム・ライト・ポッドは、脂肪細胞の縮小、コラーゲン生成の促進、酸化ストレスの低減、関節痛の緩和、筋肉疲労の回復促進などの効果がある。予約が最も多いのは、NASAの宇宙飛行士が開発したシステム「RASHA」によるセラピーだ。このセラピーでは自律神経系を整え、脳のバランスを調整し、精神を安定させる。

もちろん仕事やビーチでくつろぐ時間の間に、さまざまなセラピーの中から好きなものを1つか2つだけ受けるという利用法も可能だ。Pahelいわく「どのセラピーも、一度でも受ければ必ずリフレッシュできます。その場だけでなく、その後の生活が変わるほどの持続的な効果もあります」。セットメニュー「熟睡(Sleep Well)」が299ドル~。 carillonhotel.com

フォーシーズンズホテル・フィラデルフィア/ニューヨーク・ダウンタウン

専属ヒーラーが誘う癒やしの旅

フォーシーズンズホテルズ&リゾーツは世界各地で極上のスパサービスを提供していることで知られているが、フィラデルフィア、そしてニューヨークのダウンタウンにあるホテルも例外ではない。そんな2つのホテルでは今、利用者からのニーズの高まりに応え、心の癒やしをテーマとしたスパサービスを開始している。

フォーシーズンズホテル・フィラデルフィアで提供しているのは、エナジーワークに馴染みのない初心者向けのプログラム「シーズンズ・オブ・チャクラ・センソリアル・ジャーニー(Seasons of Chakras Sensorial Journey)」(225ドル~)だ。これは体内にある7つのチャクラのバランスを整える古代インドの健康法を体験できる60分のコースで、内容はマッサージ、アロマセラピー、音響振動療法など。壁に水晶が埋め込まれたトリートメントルームで水晶のシンギングボールを鳴らし、チャクラを活性化させながら、エッセンシャルオイルを使ったフットマッサージで免疫系を目覚めさせ、腰のマッサージでストレスと疲労を緩和し、お腹と胸のマッサージで抗酸化機能を刺激し精神を安定させていく。心が洗われるような体験の最後を締めくくるのは、額と頭皮のマッサージだ。終わった後にいただく濃厚なインド式ミルクティー、マサラチャーイは、ジンジャー、カルダモン、シナモン、クローブ、ブラックペッパー、ナツメグなどのスパイスが香る。また、その中から気に入った香りがあれば、ボトルをお土産にしてもらえる。

とりわけ好奇心の強い人には、フォーシーズンズホテル・ニューヨーク・ダウンタウンの「レジデント・ヒーラー・プログラム(Resident Healers Program)」がお薦めだ。これは先頃セラピスト陣に加わった占星術師と催眠術師の専属ヒーラーによるもので、ヒーラーに心を開いて受けるのが効果を実感する鍵となる。専属占星術師のRebecca Gordonは14歳で占星術を始め、アメリカの健康情報番組「ドクター・オズ・ショー」に度々ゲスト出演している著名人。Gordonによると、自分の星座を知っていれば心のウエルネスの指針になるという。「これまでの私の仕事の多くは、星座の知識を人々のライフスタイルの一部にすることでした。しかしスパでは、それらを一体化させることを目指しています。体の内側と外側の両方に働きかける、より包括的なアプローチです」。ホロスコープを使った運勢占い(380ドル~)の後は、赤外線サウナに入る、もしくはマッサージを受けながら、占いの結果をじっくり咀嚼してほしいとGordonは勧める。「新しく得た知識を芽吹かせることが大切なのです」。

“旅する催眠術師”として知られるNicole Hernandezは、オーダーメイドのセッション「催眠の旅(Hypnotic Journeys)」(285ドル)で、ゲストの心に潜む不安や恐怖、思考の悪癖を顕在化させる。なお、催眠セッションで新たな気付きを得て、感情が表に出てきた後は、心を落ち着かせるための時間を取る必要がある。Hernandez いわく「催眠療法は代替医療の一つです。現在では催眠セッション中の脳の状態について、多くのことが解明されています」。このセッションでは感覚的な手法と実際的な手法を組み合わせ、ネガティブな思考パターンを断ち切っていく。fourseasons.com

THE WELL at メイフラワー・イン&スパ

ヘルスコーチにお任せ

コネチカット州ワシントンを代表するホテルの一つ、メイフラワー・イン&スパは「オーベルジュ・リゾーツ・コレクション」への加盟を機に、有名インテリアデザイナーCelerie Kembleによる全面改装を行った。ただし、大きなニュースになったのはそれだけではない。生まれ変わったこのカントリーハウス風のホテルは、統合ヘルスケアで知られる、マンハッタンのウエルネスクラブTHE WELL New Yorkとの提携を発表。ホテルから車で約2時間の都心部にあり、パンデミックで休業を余儀なくされていたTHE WELLは、去る4月8日に営業再開が発表されたばかりで、この提携は双方にとってメリットのあるものだった。

この提携により、THE WELLはホテル内にあった広さ約1860平方メートルのスパを引き継ぎ、風情ある田舎のエスケープ先をオープンした。同時に、スパの看板トリートメントメニューを基に、西洋と東洋を融合させた革新的なプログラムを開始。例えば、定番トリートメントの一つだった森林浴に頭蓋仙骨療法を組み合わせた、屋外で体験できる「森林クラニオセイクラル(Forest Craniosacral)」(350ドル~)は、高い効果を実感できる新プログラムだ。ホテルの敷地内には約23ヘクタールの森林と遊歩道があり、木陰で受けるセラピーは、他では味わえない自然とのつながりを感じられる。トリートメントを予約すると、ヘルスコーチによる事前コンサルティングがオプションで受けられ、目標達成に必要なセラピーやエナジーワークを教えてもらえる。aubergeresorts.com/mayflower

レメディ・プレイス

クリアな思考を目指して

西海岸で話題のウエルネスクラブといえば、ここ。ホリスティックな自然療法の実践で知られる医師のJonathan Learyがロサンゼルスのウエストハリウッドに設立した、レメディ・プレイスだろう。「以前の自然療法クリニックでは限界を感じていました」とLearyは言う。「何しろ診療に来るのは限られた富裕層だけ。そのような少数の患者さんしか診られない状況では、医療変革はできません。私が目指していたのは、社会全体のウエルネスのあり方を抜本的に変えることでした。そのために、人々がウエルネスを日々実践できるコミューンのような場所を作りたかったのです。ウエルネスと社会生活は両立できますし、両立させるべきものですから」。

しかしパンデミックが始まったことで、人々は外部のウエルネス施設を利用するのではなく、自宅でできる健康作りに目を向けるようになる。それでもLearyは言う。「その方が安心なのでしょう。でもうちはジムのような大勢で集まる場所ではありません。次に来るパンデミックはメンタルヘルスの問題、つまり、うつ病です。人との関わりがない状態も、常に人と関わる日常に戻ることもその誘因になります。私たちが今、優先課題としている2つの大きな柱は、啓発とメンタルヘルスです」。

Learyによれば、メンタルクラリティー(クリアな思考ができる精神状態)と睡眠は、生活の中のストレス要因を相殺してくれるという。「健康とは詰まるところ、自分自身でバランスを取ることです」。そこでLearyが率いるホリスティック療法と医療の専門家チームは、「精神」「酸素」「運動」「栄養」「寒冷」「温熱」「加圧」の7要素を取り入れたメニューを作成。この7つの中から、回復治療の専門家が利用者の不調解消に必要な要素を選び出す。目指すのは、体のメンテナンス法とセルフケアを日常に取り入れる方法を人々に教えることだ。受けられる治療メニューには、高気圧酸素療法、リンパドレナージュマッサージ、アイスバス、呼吸法トレーニングなどがある。

会員は200人限定だが、レメディ・プレイスは完全会員制ではない。会員でなくてもクラスや治療サービスをアラカルトで予約できる。「会員しか利用できないのでは、人々の役に立つという本来の目的に反します。どなたでも来ていただきたい」とLearyは言う。そのポリシーに則り、今年後半にはロサンゼルスに2つ目の施設をオープンする予定だ。会費は月495ドル。remedyplace.com