Stowe Mountain, Vermont

アメリカ東部でスキーに行くなら、再開発で進化を遂げたストウに決まりだ。

By Larry Olmsted
Gondola SkyRide

Snowboarding

ストウ(アメリカ、 バーモント州)

にぎやかなスキータウンは、冬のバケーションに欠かせない舞台だ。スキー客がゲレンデで過ごすのは1日平均5~6時間で、残りの時間は食事や買い物、スキー以外のアウトドアレジャー、温泉、ナイトライフを楽しんでいるのだから、まさに大切な要素である。しかし、アメリカ西部にはアスペンやジャクソンなど有名なスキータウンがたくさんあるが、東部となると、スキー場は大抵、何もない過疎地あり、「スキータウン」という概念自体がないに等しい。ところが1カ所だけ例外がある――バーモント州のストウだ。

1763年設立の町、ストウは魅力にあふれている。19世紀築の教会の尖塔がそびえ、素朴な雑貨店が並ぶストウのメイン通りは、格好の散策ルートだ。他にもアートギャラリーやクラフトビールの醸造所、彫刻庭園、歩行者と自転車専用のトレイルなどがある。そしてそのスキー場は、州の最高峰マンスフィールド山(標高約1340メートル)とスプルースピーク山にまたがって広がっている。

ストウはアメリカ最古のスキータウンだ。19世紀、ヨーロッパからの入植者の増加に伴い、現代スキーの原型となるテレマークスキーがにこの地に伝来。その後、ストウでアメリカ初のスキーパトロール隊が誕生し、さらに、アメリカ初の民営クロスカントリースキーセンター、Trapp Family Lodgeがオープンした。こうした歴史は今もこの町に色濃く息づいていて、スイスやドイツ、オーストリア系のレストランや民宿が、パンケーキやメープルシロップ、チェダーチーズといったこの地域らしい食べ物の他に、シュニッツェル(ウィーン風仔牛肉のカツレツ)やチーズフォンデュをメニューに加えている。

ストウのスキー場は特に4つの超上級者向けコース「National 」「Starr 」「Goat 」「Liftline」で知られている。いずれも凹凸の多い険しい急斜面で、リフトで上っている時点で怖気付いてしまうほどの迫力だ。これらのコースは、ワイオミング州ジャクソンホールの「Corbet’s Couloir(コーベットの裂け目)」など、いかにも恐ろしげな名前の付いた西部の有名コースと同様に、長年上級スキーヤーを惹き付けている。だが、ストウのスキー場にはもっと穏やかな面もある。スプルースピーク山のゲレンデは初心者の練習に最適で、スキーを習うにはアメリカ東南部一の場所と言えるだろう。また、2つの山の中腹には、林間コースやこぶのあるコース、圧雪コースなど、あらゆる技能レベルに対応する多種多様なコースが走る。

実は少し前までこの2つの山のスキー場は別々に分かれていた。それが近年、2つの山をつなぐゴンドラが設置され、127本のコースを持つ1つの巨大スキーリゾートに生まれ変わった。このゴンドラ設置は、スプルースピーク山のベースエリアを、コロラド州のビーバークリークやスノウマスのような、スキーイン&アウトが可能な趣あるビレッジに改修するための全面的な再開発の一環だ。

この他、ストウの広大なビレッジを構成するのは、スケート場、劇場、著名なコースデザイナー、ボブ・カップが設計したゴルフコース、会員制クラブ、ショップ、レストラン、多数の高級別荘など。ビレッジ内にあるホテル、ザ・ロッジ・アット・スプルースピークはストウ一の高級ホテルで、スキーイン&アウトが可能なホテルはここだけだ。

経営母体がコロラド州に拠点を置く大手リゾート運営会社、Vail Resortsに変わったことで、ストウでは今後も改修と大規模投資が続く。次の大きな改修は、旧式のリフトを6人乗りの高速チェアリフトに入れ替える工事で、この新型リフト「Sunrise」は今冬から稼働する予定。そして、さらに2基のリフト「Fourrunner Quad」と「Gondola」もラインの改良が予定されている。

Vail Resortsのグループ共通リフト券「Epic Pass」は、コロラド州のベイル・スキー・リゾートはもちろん、カナダのウィスラーなど世界各地の一流スキーリゾートで利用可能。また、スプルースピークの高級貸し別荘は夏の間、ブラジルやアルゼンチンなど南米からの観光客に人気で、南半球の厳しい冬を避けて、ハイキングやマウンテンバイク、ゴルフ(そして秋口は世界的に有名なバーモント州の紅葉)を満喫する姿が見られる。ストウの町では昔からフェスティバルやコンサートなどのイベントが盛んに開催されているが、Vail Resortsによる大規模な再開発が、この町を本当の意味で東部一のリゾートタウンに押し上げたと言える。stowe.com