魅惑のデザイナーズホテル
ブーツの形をしたイタリアのかかとにあたる海沿いのプーリア地方と、甲の部分にあたる山あいのバジリカータ地方では、絵のように美しいデザイナーホテルやスパが訪れる人を魅了している。

イタリアは旅慣れた人にとっては目新しい旅先ではないが、美術に建築、ユネスコの世界遺産、ウエルネス施設、斬新な創作郷土料理を楽しめる、まだあまり知られていない穴場スポットも数多く残っている。ここでは、ローマ拠点の旅行会社アクセス・イタリー(accessitaly.com/enaccessitaly.com/en)が選んだお薦めホテルを4つを紹介しよう。同社は40年間にわたり、イタリア全域でオーダーメイドツアーを催行しているイタリア旅のエキスパートだ。

プーリア地方

マッセリア・トーレ・マイッツァ

アドリア海沿岸にある古木のオリーブ畑に抱かれた16世紀築のファームハウスが、安らぎのオアシスに生まれ変わった。マッセリア・トーレ・マイッツァは、2019年5月にオープンしたロッコ・フォルテ系列ホテル。白漆喰塗りの建物内にある40客室のほとんどがプライベートプール付きで、そこから陶製タイルと色鮮やかなブーゲンビリアがアクセントを添える美しい海の景色が楽しめる。併設スパは、プーリア地方の伝統建築である、円錐形屋根で煉瓦造りのトルッロと呼ばれる建物が並ぶ一角にある。シチリア島産のオーガニック原料を生かしたコスメブランド「アイリーン・フォルテ・スキンケア」の製品を使った各種トリートメントをアラカルトで予約できるが、ここで受けておきたいのは、多面的なヒーリングセッションが組まれるトータルウエルネスプログラムだ。この他、地元産の食材で作った食事によるオーダーメイドの栄養プログラムや、大自然でのトレッキング、ヨガ、9ホールコースでのゴルフなど多彩なアクティビティーも用意されている。 roccofortehotels.com

オストゥーニ・アート・リゾート

伝統建築トルッロで目覚める朝を夢見るロマンチックな旅人にとって、このシックなホテルほどぴったりの宿泊先はないだろう。敷地内の5棟のトルッロは、ローマ在住の建築家Giorgioと不動産開発業者Giulioの Angella兄弟が改修を手掛けたもので、最大16名まで宿泊可能。トルッロの一部はモダンな本館とつながっており、パーティーができる十分なスペースが屋内外にある。緑豊かな敷地に植えられているのは、オリーブやアーモンドの木、草原を彩る花々だ。プールサイドで周囲を囲む草花の香りを楽しんだら、屋外の窯で焼くピザ用のハーブと野菜を育てている菜園にも立ち寄ってみよう。施設内のあちこちに飾られた現代アートの鑑賞も、ここでのお楽しみの一つ。どれもAngella兄弟が国内外から収集した気鋭の若手アーティストによる作品だ。 ostuniartresort.com

バジリカータ

サンタンジェロ・ラクジュアリー・リゾート

トルッロに泊まるのとは違って、洞窟で一夜を過ごすとなるとそれほどロマンチックな感じはしない。しかしバジリカータ地方を旅するなら、それも有りだと思っておこう。同地方南部の都市マテーラに残る“マテーラの洞窟住居”は、旧石器時代から継続的に人が居住していた場所だ。ここにある住居や教会は石灰岩をくり抜いた独自の様式で造られているが、1950年代に政府が住民を他の地域に移住させたことで、一時は廃墟と化す。しかし近年になり、その文化的資産が見直され、現在ではイタリア国内でも急速に発展している観光地の一つとなった。この洞窟住居はユネスコの世界遺産に登録されており、2019年にはマテーラの町も欧州文化首都に選ばれている。サンタンジェロ・ラクジュアリー・リゾートがあるのはまさにこの洞窟住居群の中で、旧市街中心部のサン・ピエトロ・カヴェオーゾ広場にも程近い。スイートルームを含む全16客室のこのホテルはマテーラの歴史を感じられる場所だが、同時に快適に過ごせるようモダンな設備も整えられている。 santangeloresort.it

パラッツォ・マルゲリータ

マテーラから車で約45分、丘の上の町ベルナルダには、映画のセットに迷い込んだかのような美しい並木道が延びている。妄想の撮影メモに「シーン:見事にライトアップされた19世紀イタリアの大邸宅」と書き込み、監督はもちろん巨匠フランシス・フォード・コッポラを指名しよう。パラッツォ・マルゲリータは、そのコッポラが2004年、祖父の生まれ故郷ベルナルダにある1892年築の邸宅(かつてムッソリーニの国家ファシスト党政権の役人が使用していたこともある)を購入し、シックなデザイナーホテルに生まれ変わらせたものだ。以来、このホテルはコッポラ一家が集まる場所にもなっており、やはり映画監督である娘ソフィア・コッポラの結婚式も敷地内の庭園で行われた。時にシネマルームとなる大広間には、コッポラ自らが選んだイタリアの名作を含む膨大な数の映画コレクションが用意されている。敷地内のパブリックスペースはプール、中庭、庭園など。いくつかの豪華な客室は、コッポラ家にちなんだデザインが施されている。とはいえ、ここでの本当の主役は食事だ。バジリカータの郷土料理に現代的なアレンジを加えた料理の数々は、広場にある映画をテーマにしたカジュアルなカフェや庭園でのプライベートディナーで楽しめる。 palazzomargherita.com —Anjali Kumar